グレゴリー40周年
グレゴリーは今年、40周年の節目を迎える。
創設者のウェイン・グレゴリーはアメリカ北東部で生まれ幼少期にカリフォルニアへ移住、ボーイスカウトで自然と触れ合いながら成長した。
’70年代にかけ、アメリカは文化の円熟期を迎える。ベトナム戦争を挟んで若者の意識は揺れ、愛と平和と自由が語られ、ヒッピーや自然回帰のムーブメントは社会現象となった。ウェイン・グレゴリーはこの時代を多感な若者としてカリフォルニアで過ごし、自然を歩いて自分の存在を確かめる、そんなバックパッキングのムーブメントとダイレクトに触れ合う。
グレゴリーが象徴する空気、それはアメリカのもつ「自由」そのものだろう。かつて登山は各国で、信仰や軍事的な訓練などの目的に支えられ発展してきた。またその後の近代登山は、一歩進んだ人類の叡智の証としての、未知の領域への征服欲に依るものが大きかった。
しかし、グレゴリーが支持を得たアメリカのトレッキング文化は、登頂を是が非でも達成するという支配的な心情からではなく、ましてや何かを叶えるための信仰心からでもなく、ただ歩き続けるという、単純でしかし広大な自由の領域から生まれた文化だ。
目的からも欲からも解放され、誰も傷つけず、次の一歩を自分で選べる自由。アメリカの、そして世界の最も大切な要素が、グレゴリーが今に伝えるパックに詰められている。
グレゴリーは、かの有名な「パックは背負うものではなく、着るものだ」という哲学を初期から標榜し、その理念を形にするため、早くからパックの内蔵フレームを身体に沿うよう曲げる技術を投入、さらには可変式ショルダーハーネスを採用した。
ついには背面長の調節機能を実現し、発展をつづけたグレゴリーのパックは今や人間工学に裏打ちされた究極のフィッティングで、着るどころか、逆に歩く体をパックが支えてくれるかのような安定感を誇っている。
一方で創業当初から原点として今に受け継がれる「デイパック」モデルが象徴するように、グレゴリーには守り続けてきた精神がある。
自由を恐れない不変の魂を、変わり続ける技術とアイディアで、背中から抱きしめるように支える。40年を迎え世界中で愛されるパックは、今日も誰かの自由な一歩を、その背で見守っているだろう。