2017.AUT-006

掌に宿る、消えない炎。

フュアーハンドランタンをみつめる

100年を越えて愛され続けるランタンがある。
ハリケーンランタンの代表格「フュアーハンドランタン」を、アウトドア好きなら一度はどこかで見かけたことがあるだろう。むきだしの機構、無骨なスチールとガラスのボディ。誰でも簡単に扱える信頼の明かりは、ずっとドイツで、もう2億台以上作られ続けている。

下部のタンクから灯油が芯に浸み込み炎が灯る、単純な仕組み。温められた空気が上昇し、煙突部から放出されるがその際に新鮮な空気も取り込まれ、両側のパイプを伝って下部まで送り込まれることで炎の燃焼を促進させる。仕組みがぜんぶ目に見える、直感的な形にはまったく無駄がなく、手の加えようのない美しさがある。

ホヤはしっかりとフレームで支えられ、その中で輝く炎は風速80メートルに耐えると言われている。直置きした時の安定性も高いので、多少の環境の悪さもものともしない。燃料は手に入りやすい灯油、しかも子供でも簡単に点灯できるうえ、約20時間燃焼し続ける効率の良さ。今なおドイツをはじめとした軍隊や、途上国の日常の明かりとして採用されているのはそのシンプルな扱いやすさと信頼性によるものだろう。

LED全盛の現代、並み居る大光量のライトに比べれば確かに、フュアーハンドランタンはやや暗いかもしれない。ただしそこには灯り本来の安らぎがあり、近くにおいで、と手招きされるような優しさがある。ともした炎のすぐそばへ、静かに心を寄せて佇もう。誰かがその明るさを見つけて、ふっと隣に座るかもしれない。ランタンを挟んで囲むひと時、それはLEDには真似できない、とても穏やかであたたかい時間になるだろう。

フュアーハンドランタンの正規品には、丸いタグがぶら下がっている。手のひらに炎を宿すそのロゴマークは、伝統的な手仕事で堅実な炎を生み出すドイツ職人の誇りを表しているはずだ。ボディから溢れる、掌のあたたかみを伝えるようなクラフトマンシップ。この炎は100年先も、きっと消えない。

 

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