パタゴニアのリサイクルダウン
冬といえばダウン。
ダウンジャケットはその保温性の高さと軽量性で高所に挑むアルピニストたちの高いニーズに応え続けてきた。その機能は今や広く一般に愛されており、街であのぬくもりに包まれると、体と同時に気持ちも例えようのない安心感に包まれるのは誰もが実感したことがあるはずだ。
でははたして、そのぬくもりの根源を振り返ったことがあるだろうか。
ダウンウェアの要である羽毛は、冬鳥たちが厳しい寒さに負けずに冬を乗り越えるため蓄えたものだ。パタゴニアはいち早く、2014年には「トレーサブル・ダウン」を採用し、その羽毛が鳥たちに酷い仕打ちをして得たものではないことを確認できるようにした。
そしてこの冬、パタゴニアは「リサイクル・ダウン」を導入する。
いろいろな理由で手放されたダウンウェアから回収された、600フィルパワーのグースダウンが、再生新素材としてバージン・ダウンと変わらない保温力で生まれ変わるのだ。
パタゴニアは、「ごみを美しいものに変えることができると、きっとなにかが救われる。」と言う。その通りに、放っておけばゴミになってしまったかもしれないダウンウェアのおかげで、多くの冬鳥たちが裸にならずに済むことだろう。そこにはダウンを生まれ変わらせる技術と、やさしさがある。
役目を終えたダウンウェアは、それまできっと幾度もの寒さから誰かを守り、かつ、寒さをむしろ楽しむ体験を生み出してきたはずだ。冬鳥たちがくれたぬくもりは、そうやって誰かの幸せを作り、それが今度は打ち捨てられることなくリサイクルされることで、羽毛が思いを乗せたまま次の人をあたためる。
そこには「何かを犠牲にして自分だけがあたたまる」ような後ろめたさはもう、ない。
途切れることのないあたたかさと、受け継がれる幸せの体験を詰め込んで、これからのダウンウェアには、ぬくもりが上乗せされていくばかりだ。