スポルティバの名品アプローチシューズ
三千メートルを超える山にスニーカーでは挑めないように、靴は行先によっていろいろと履き替える必要がある。
どこを歩くために何を強化して作られた靴なのか、それは自分の目的と足の形にぴったり合うのか、靴選びにおいてはそこを一番重要視すべき。だが、いざ自分で靴を買うとなると、そこまではっきりとビジョンが見えていないこともよくあるものだ。
アプローチシューズと言われて、用途を明確に理解できている人の方が少数だろう。
元々はクライマーのために、目的地である岩場までの道のりを快適に歩くという用途で開発された靴だが、ローカットの登山靴や、もっと言えばウォーキングの靴などともさして違わないようにも見える。スポルティバがこの春打ち出す「トラバースX」シリーズは、そう感じるのももっともな、様々な靴の目的や特徴を掛け合わせた、いいとこどりシューズだ。
登山靴の堅牢性や安定性を持ちつつ、トレイルランニングシューズから導入された衝撃吸収性や柔軟性を併せ持ち、かつクライミングシューズ由来の高グリップ力ソールを備えるという、3つの要素がミックスされたシューズ。足をしっかり守り、岩場も気にならない安定歩行を可能にしながら、軽くて蒸れにくく、足にやわらかくフィットする。
こんな靴を履いたら、逆に様々な行先が見えてくる。もちろん岩場へは行くとして、しかし予定していなかった近所の山から、街を見下ろす気分になるかもしれない。意外と滑りやすい雨の街の石畳を、ギュッと踏みしめ出かけたくなるかもしれない。イタリア産まれの靴だからか、スニーカーには感じる事のない伊達な趣は、次の旅行で見せびらかしたくなってしまうかも。サッと動ける軽やかさは、家族との自然散策で良い所を見せるにはもってこいだろう。
一足でこんなにビジョンがふくらむなんて、これはもうアプローチシューズとは言えない。いろんな遊び方を、「トラバース」すなわち横断して、クロスする。あっちへこっちへと自分を、そう、きっと3倍くらい連れ出してくれる、お楽しみシューズの誕生だ。