受け継がれ、変革するサレワ
このロゴを昔見た気がする、でもどこか違う。
サレワは80年以上も前、乗馬用の鞍製造を生業としてドイツに誕生した歴史あるブランドだ。鞍と革製品を意味するドイツ語の頭文字から取られた造語をブランド名に掲げ、以降革製品と金属加工の技術から登山用品のラインナップを広げ、クライミングギアの第一人者として確固たる地位を築き上げていった。
力強さと洗練された品質を託した具象的な鷲のロゴマークは、80年代には世界を席巻していた。この時代のサレワの「鷲のマーク」は、長く登山に親しんでいる方ならよく目にされていただろう。
このころ、現オーナーであるイタリアの名家筋、ハイナー・オベラウッヒ氏がサレワとの深い関係を築き、85年にはイタリアで独自のウェア企画製造がはじまる。90年には経営権が引き継がれ、21世紀を前に本社もイタリアへと移された。現在はイタリア・ボルツァーノに、クライミングウォールなどを併設した現代的な大社屋を構えている。
昨年、サレワはロゴマークを、翼を広げた鷲をイメージさせるソリッドな抽象アイコンに変更した。長いドイツでの歴史を踏まえながら、イタリアの血を入れ、まさに今生まれ変わっているのだ。商品群はロゴ同様に、先鋭的で、有り体に言えば非常にカッコよくなってきた。昔のロゴを知る人は、「知っているはずなのに」何か違ってすごく良い、と感じるはずだ。
非常に軽くて、しかし堅牢な靴などは最たる例だ。踵を囲むようにワイヤーを入れて、いかなる動きや衝撃に対しても足首周りの空間を崩さず保つ「3F」システムには、革製品と金属加工に長けたドイツ・サレワのルーツを感じながらも、靴全体は決して機能だけにゴツゴツとせず、柔らかな履き心地とすらっとしたフォルムが強い印象を残す。
革新的なヘルメットも同様だ。もともとクライミングギアにはかなりの強みを持っていたが、イタリアのデザイン力が200グラム台という驚異的な軽さのヘルメットを産み出す。素晴らしい被り心地とシルエットで、「帽子代わりにいつもかぶる」という新しい安全ムーブメントも浸透させた。だって、軽くて安全、しかもカッコいいなら、誰だってかぶりたくなるというものだ。
歴史と懐かしさがもたらす安心だけで止まるわけにはいかない。ロゴ変更には、サレワのこうした強い意志が表れている。歴史とともに羽ばたく翼で、革新的な未来へ飛び立つ。今この時が、サレワ再起動の時なのである。