COLUMN

喜びと感謝を生んだ偉大な168Km

UTMBの思い出

世界最高峰のトレイルランニングレース、ウルトラトレイル・ドゥ・モンブラン…モンブラン山群を中心としたフランス、イタリア、スイスの3カ国を巡る、世界中のトレイルランナーの憧れであり目標である大会に2013年8月、機会を得て出場しました。
距離168km、累積標高9,600mを46時間以内で走破しなければならない、まさに世界レベルの過酷で美しい大会でしたが、その記憶は2年を経ても、いや永遠に色褪せないと言い切れるほど、スペシャルな体験でした。

美しいモンブランの山景と、ヨーロッパで見る満天の星空、国を違えても響くあたたかい声援の中を、トレイルランニングに懸ける情熱を共有できるランナーたちと走る充実感。
一方で、厳しい標高差を駆け抜け、睡魔や疲労のため襲ってくる幻覚と闘い、胃が受け付けない食糧をむりやり補給し、肉体を極限まで追い込んで、ひたすらに走るという激烈な体験。
長時間・長距離、寝ずに己と戦いながら、異国をこの脚で走って旅したのです。

そのうち、己の力のみで孤独に走っているのに、なぜかよけいに、見知らぬ人々の声援や補給所での家族の応援、選手たちとの共闘、そしてもっと大きな、山々や大自然の佇まいまでもが強く意識されるようになりました。孤独で激しい一人旅はいつの間にか、自分と徹底して向き合い、自分を極限まで見つめる、人生における稀な時間となっていたのです。
そしてその体験は、自分が今この瞬間に存在することの奇跡、健やかに走れることへのよろこびを生み、それは自分以外の「他」への、大いなる感謝に変わりました。

ゴールタイムは42時間25分22秒…この時間の内に、生まれ直すに等しいほどに、あらゆる感情と体験が凝縮されていたように思います。
トレイルランニングは自分をこんなステージにまで連れて行ってくれる偉大なスポーツであり、もはや私にとってはライフスタイルの一部です。

 

株式会社ナムチェバザール
代表取締役社長 和田幾久郎

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